にのみや整形外科/JR和歌山線「高田」駅西口すぐ。大和高田市の整形外科クリニック

国宝 歌舞伎におけるクロスロード伝説

こんにちは。

奈良県大和高田市 JR和歌山線「高田」駅前すぐの整形外科クリニック
「にのみや整形外科」院長の二宮俊憲です。

今話題の映画「国宝」、遅ればせながら観てまいりました。
封切り以来2ヶ月近くになりますが、土曜日の午後とはいえ映画館は満席で、あいかわらずの人気を実感しました。

この映画、吉沢亮さんと横浜流星さんが演じる二人道成寺のシーンの美しさがよく取り沙汰されています。歌舞伎にはまったく素人の私が観ても、前後2回観られるこのシーンにおける役者さんの姿と所作の美しさは素晴らしいものがあると思いました。

今回はそれとは別に、タイトルに関しての考察を少し。

クロスロード伝説とは、ブルースの世界で伝説的な存在であるロバート・ジョンソン(1911〜1938)が十字路で悪魔と取引をして、卓越した音楽の才能とギターのテクニックを手に入れたというものです。

国宝においても、主人公喜久雄が小さな祠で祈っているところを娘に何を祈っているのか尋ねられ、悪魔に自分が日本一の歌舞伎役者になれるように頼んだのだと答えるシーンがあります。

日本においては、キリスト教世界のような善の象徴である神と、悪の象徴である悪魔というような対比がされることは少ないため、この場面で悪魔という存在が提示されるのは少し違和感があります。
しかし自分の魂を売り渡してでも願いを叶えたいと思う時に、相手が鬼や祟り神では不釣り合いで、やはりここは悪魔でないと成り立たないと思いました。

日本には物事の白黒をうやむやにしがちな、よくいえば協調と調和を重んじる歴史があり、悪魔のような絶対的な悪の存在はあまり登場しません。

そんな中で、終盤に喜久雄が女性カメラマンに語りかけられたように、この映画は芸を極める、すなわち人間国宝になるために、血の滲むような修練を重ねた上で、さらに悪魔に魂を売り渡さざるを得なかった男の、美しくも壮絶な人生の物語でした。

ご興味のある方は是非ご覧になるようお勧めいたします。